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秋田地方裁判所 昭和44年(行ウ)5号 判決

秋田市中通一丁目一番二号

原告

浅利喜智治

同市中通五丁目五番二号

被告

秋田南税務署長

保科弘

右指定代理人

家藤信正

鈴木昭平

長谷川政司

西垣稔丸

高梨子清重

豊田正二

福田隆映

高橋英一

清水信雄

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告

1  被告が昭和四三年八月三一日付でなした、原告の所得税額を更正し、過少申告加算税を賦課した更正決定処分を取消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  被告

主文同旨

第二当事者の主張

一  原告の請求原因

1  原告は被告に対し、昭和四〇年度分所得税について、不動産所得三六四万四、〇〇〇円、給与所得一〇七万四、三〇〇円、山林所得三五万円、申告納税額一四五万一、三一〇円として確定申告をしたところ、被告は昭和四三年八月三一日付で、不動産所得三七六万四、〇〇〇円、給与所得一〇九万五、三一九円、譲渡所得一三五万三、六四七円、山林所得六八万六。四〇〇円、申告納税額二〇二万四、七〇〇円と更正し、かつ、過少申告加算税として二万八、六〇〇円を賦課する旨の決定(以下本件更正処分という。)をしたが、原告は譲渡所得と山林所得につき、これを不服として同年九月二七日被告に対して異議申立をしたところ被告は昭和四四年二月四日付で山林所得を二七万四、〇四五円に減じ、過少申告加算税も二万六、八〇〇円とする旨の決定をしたのであるが、譲渡所得についてはそのままであつたので、原告は同年三月三日仙台国税局長に対し審査請求をしたが、同年六月一六日付で審査請求棄却の裁決があり、同月二五日その通知を受けた。

2  しかし、本件更正処分は原告には何ら譲渡所得が存在しないのに拘らず前記一三五万三、六四七円の譲渡所得があるとしてなされた違法な処分であるから、これが取消を求める。

二  被告の請求原因に対する答弁

1  1項は認める。

2  2項は争う。

三  被告の主張

1  原告の昭和四〇年度分の譲渡所得について、被告が調査したところ、原告が秋田県から昭和三九年三月一〇日代金七八万九、三五三円で払下げを秋田市長野町七番地七〇の宅地二二・九三坪(以下本件宅地という。)を昭和四〇年一二月六日訴外川村幸雄に対し代金二二九万三、〇〇〇円で譲渡したのに、これにつき昭和四〇年度分の所得税の確定申告がなされていないので、左記の計算により右譲渡所得一三五万三、六四七円の更正処分をしたものである。

(1) 譲渡収入金額 二二九万三、〇〇〇円

(2) 取得費 七八万九、三五三円

(3) 譲渡益 一五〇万三、六四七円

(4) 譲渡所得の特別控除一五万円(所得税法三三条四項三号による特別控除額)

(5) 譲渡所得額 一三五万三、六四七円

2  被告はその後の調査により、原告の訴外川村に対する本件宅地の譲渡による収入は、二二九万円であることが判明したので、昭和四五年八月二〇日付で左記の計算により再更正処分をなし、かつ、過少申告加算税額を一〇〇円減額する決定処分をした。

(1) 譲渡収入金額 二二九万円

(2) 取得費 七八万九、三五三円

(3) 譲渡益 一五〇万〇、六四七円

(4) 譲渡所得の特別控除 一五万円

(5) 譲渡所得の金額 一三五万〇、六四七円

なお、右のとおり本件宅地の譲渡代金は二二九万円であるのに、原告および原告が代表取締役をする訴外株式会社協働社(以下単に協働社という。)は、一二七万〇、五二五円と主張し、協働社の雑収入として計上していたのであるが、その計算の根拠も明らかではなく、協働社が収益に計上すべき理由が認められないので、被告は協働社の法人税について右雑収入を減額する更正処分をした。

四  被告の主張に対する原告の認否および反論

被告の主張のうち、原告および原告が代表取締役をする協働社が、本件宅地の譲渡益として一二七万〇、五二五円を協働社の雑収入に計上したこと、本件更正処分の経過が被告主張のとおりであることは認めるが、原告が秋田県から本件宅地の払下げを受けたとの点は否認する。

本件宅地は、協働社が秋田県から代金七四万五、二二五円代金分割弁済のための利息六万一、一〇〇円合計八〇万六、三二五円で払下げを受けたもので、その経過は次のとおりである。

すなわち、昭和三二年協働社が訴外小西ツタ所有の建物を店舗として賃借するに当り、同女からその移転先を提供されたい旨の要求を受けたので、同年六月原告がその所有にかかる秋田市長野町七番地所在の建物(通称憩住宅)を代金二〇万円で協働社に売渡し、同会社はこれを右小西ツタの住居にあてていたのであるが、同女退去後は、協働社社宅として社員佐藤晒を居住させ、同人から使用料を徴収してきた。ところで、昭和四〇年協働社は秋田駅前土地区画整理事業により右憩住宅の移転を求められ、そのため、秋田県から前記のとおり本件宅地の払下げを受け、同年一二月一三日これを訴外川村幸雄に売却し、その益金を同社の収益として処理した。ところが、昭和四二年三月、原告および協働社は、仙台国税局調査課から右払下げ先は原告であつて協働社ではないから、訴外川村に対する本件宅地の売却益金を原告の所得にすべき旨の指示を受けたので、止むなくこれに従い昭和四三年八月一日、原告は協働社より売渡代金一二七万〇、五二五円から必要経費を控除した五二万五、三〇〇円の支払を受け、同年度分の所得税確定申告に際し、譲渡所得として申告したのである。

しかし、本件宅地は、払下げ当初から協働社の所有でありその売却益も同社の所得として処理されてきたものであり、これを係官の指示するように原告の所有ならびに所得とする方途がないため、右のように協働社から原告にこれを売却した形をとつたにすぎず、原告には譲渡所得は一切存在しない。

よつて、原告は、本件更正処分のうち、譲渡所得以外の部分については争わないが、右譲渡所得については違法というべきであるから、右処分の取消を求める。

第三証拠

一  原告

1  甲第一ないし第八号証、第九号証の一、二、第一〇ないし第一二号証提出。

2  証人佐藤正、同藤田弘美の各証言および原告本人尋問の結果を援用。

3  乙第六、七号証、第一〇号証の一、第一一号証の各成立は不知、その余の乙号各証の成立は認める。

二  被告

1  乙第一、二号証、第三号証の一、二、第四ないし第七号証、第八号証の一、二、第九号証の一、二、第一〇号証の一ないし三、第一一号証、第一二号証の一、二、第一三号証の一ないし三、第一四ないし第一九号証提出。

2  証人工藤行夫(第一、二回)、同小寺常寿の各証言を援用。

3  甲第三ないし第五号証の各成立は不知、その余の甲号各証の成立は認める。

理由

一  請求原因1の事実は、当事者間に争いがない。

そして、本件更正処分のうち、譲渡所得に関する部分を除くその余の部分(但し、その後異議決定により山林所得額は二七万四、〇四五円に、過少申告加算税は二万六、八〇〇円に各減ぜられている。)については、原告の争わないところであるから、以下に右譲渡所得につき検討する。

1  成立に争いのない乙第一、第五号証、第一〇号証の二、三、証人小寺常寿の証言により真正に成立したものと認められる乙第一〇号証の一、証人工藤行夫(第一回)、同小寺常寿の各証言、原告本人尋問の結果(後記措信できない部分を除く)および弁論の全趣旨を総合すると、原告は、税法上いわゆる同族会社である協働社の代表取締役であるが、昭和三二年六月頃、その所有の前記憩住宅を協働社に代金二〇万円で売渡し、協働社は右住宅をその社員等の住居に使用させていたところ、昭和四〇年頃秋田市の同市駅前土地区画整理事業の施行に伴い、右住宅の移転を求められ、その移転敷地として本件宅地が秋田県からいわゆる縁故特売により払下げられることになつたのであるが、右払下げに際しては、昭和三九年三月一〇日付で秋田県との間で原告を買主とする売買契約書(乙第五号証)が作成され、かつ、昭和四〇年一二月四日右売買を原因とする原告名義の所有権移転登記がなされているほか、協働社の専務らは、同年一一月二六日本件宅地につき訴外川村幸雄との間で原告を売主とする売買契約を締結し(乙第一〇号証の二はその契約書)同年一二月一三日その旨の登記が了されていることおよび同年一二月七日付で原告名義の右売買代金二二九万円の領収書を右訴外人に交付していることがそれぞれ認められる(なお、証人藤田弘美の証言および弁論の全趣旨により窺われる、原告の協働社内における地位、同社の経営内容などを参酌し考えれば、右売却処分などが、原告の意思に基づかずになされたものとは到底認め難い)

2  次に成立に争いのない甲第九号証の一、二、第一二号証、乙第二号証、第三号証の二、第四号証、第八号証の二、証人藤田弘美の証言により真正に成立したものと認められる甲第三号証、証人工藤行夫の証言(第一回)により真正に成立したものと認められる乙第六、第七号証、証人工藤行夫(第一回)同小寺常寿、同藤田弘美の各証言および原告本人尋問の結果(後記措信できない部分を除く。)によれば次の事実が認められ、これを覆えすに足りる証拠はない。すなわち、本件宅地の払下げ代金は、(1)第一回、昭和三九年三月三一日、一八万七、二二五円、(2)第二回、昭和四〇年三月三一日、一八万六、〇〇〇円、(3)第三回、同年一一月三〇日三七万二、〇〇〇円および利息四万四、一二八円の三回に分けて秋田県に対し支払われているのであるが、

(イ)  右第一回支払分につき、協働社総勘定元帳の当座預金および土地勘定に協働社の支払いとして記入され、また、協働社の昭和三九年度法人税確定申告書添付の決算報告書中の土地内訳に本件宅地が計上されていた。

(ロ)  しかし、右支払分は、昭和四一年一月三一日付で、本件宅地は原告所有の土地であるとし、協働社が原告個人の債務を立替え払いした場合の帳簿上の取扱いである社長勘定に該当するものとして、右総勘定元帳の土地勘定から社長勘定に振替える帳簿上の処理がなされている。

(ハ)  そして、右第二回支払分については、昭和四〇年一一月一九日付で、右第三回支払分については同年一一月三〇日付で、右総勘定元帳の社長勘定において、いずれも原告個人の支払分として処理され、また、協働社の昭和四〇年度法人税確定申告書添付の決算報告書の土地内訳には本件宅地は計上されていない。

(ニ)  しかるに、右決算報告書の雑収入内訳には、本件宅地の売却代金(訴外川村に対する)として一二七万〇、五二五円が計上されている(なお、右金額と訴外川村に対する売却代金二二九万円との差額分については、その入金処理がなされていない)。

そして、右認定によれば、本件宅地に関して、協働社の帳簿および決算報告書には、協働社の財産として処理された部分と原告個人の財産であることを前提として処理された部分との相互矛盾する記載が存するのであるが、右(イ)の総勘定元帳の記載は(ロ)のとおり原告個人の支払分として社長勘定に訂正されているうえ、右訂正に関し、原告本人尋問の結果中被告から昭和四二年三月の調査の際、本件宅地を原告の個人所有として処理するよう指示され、その結果事実に反する処理がなされるに至つたとする部分は、前記1で認定した事実および成立に争いのない甲第八号証の一、二、第一二号証、乙第八号証の一、二、証人工藤行夫の証言(第一、二回)に照らし措信し難く、却つて、協働社自身における年度末修正によるものでないかとも推測されること、また、右(二)の記載については、協働社の雑収入に計上された本件宅地の売却代金は、その金額の算定の根拠さえ明らかでないこと等の諸点を考慮すると、一見原告の主張に沿う右(イ)、(ニ)の記載の正確性は極めて疑わしく、採用するに由ない。

3  そして、本件宅地は、協働社所有の憩住宅の移転敷地として秋田県から払下げられたものであるが、右払下げが秋田市の土地区画整理事業の円滑な遂行のため、秋田県がいわゆる縁故特売により売却したものであるにすぎないことを考えると、移転すべき建物が協働社の所有であるからといつて、その移転敷地である本件宅地の払下げは同族会社である協働社の代表取締役である原告個人が受けることを必ずしも妨げるものでなかつたと推認される(原告本人尋問の結果中これと抵触する部分は措信しない。)ところ、前記1および2の(ロ)、(ハ)で認定した諸事情を総合考慮すると、本件宅地は、原告が昭和三九年三月一〇日秋田県から分割支払の利息分を含む代金合計七八万九、三五三円で払下げを受けて取得し所有していたものを、自らが売主となつて昭和四〇年一一月二六日訴外川村に対し代金二二九万円で売却したもの(従つて、その譲渡所得は被告主張のとおり計算上一三五万〇、六四七円となる。)と認めざるを得ず、他に右認定を覆えすに足りる証拠はない。

そして、右によると、本件更正処分は、本件宅地の譲渡所得を原告に帰属すべきものとした点に違法はないけれども、右譲渡所得額については一三五万〇、六四七円とすべきところを一三五万三、六四七円とした限度において違法とすべきであるが右部分は昭和四五年八月二〇日付再更正処分によりその所得額が右一三五万〇、六四七円と減額され過少申告加算税額も一〇〇円減額されていることは成立に争いのない乙第一九号証により明らかであつて、右違法部分はすでに右の減額再更正により取消されていると解するのが相当であり、被告の本件更正処分は、結局違法とすべきものである。

二  以上によると、原告の本訴請求は理由がなく失当であるからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法第八九条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 篠原昭雄 裁判官 鈴木之夫 裁判官 多田元)

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